【失敗事例あり】個人事業主と法人の違い12個!法人化で得する条件は

事業を始めたいと考えた時に、個人事業主と法人のどちらを選択した方がいいのかと悩む方もいらっしゃるでしょう。

個人事業主と法人とでは、税金の種類も違いますし、どちらが得するかは、経営の仕方や規模などによっても違いが出てきます。ズバリ、どちらが良いと言うのは断言できませんが、二つの特徴を把握しておくことで、自分の目的に合った起業対策ができます。

ここでは、個人事業主と法人との違いを比較し、それぞれの特徴について解説していきます。

さらにこの記事では、法人化に注目して得する条件や法人化しない方が良い人はどのような人か、法人化をして失敗した事例を取り上げて詳しく紹介していきます。

この記事でわかること

  • 個人事業主と法人の違いを解説
  • 法人化した方が良い人とは?
  • 法人化しない方がいい人はどんな人?
  • 法人化の失敗例を取り上げながら得する条件を解説

最後まで読めば、法人化するメリットやデメリットがわかり、ご自分が描く事業の未来が描けるヒントになると思います。ぜひ最後までご覧ください。

個人事業主と法人の違い12項目を徹底比較!

最初に個人事業主と法人の違いを12項目に分け、一覧表にまとめました。

項目個人事業主法人
税金の比較・所得税
超過累進課税で最大45%の税額負担が対象
・個人住民税
・個人事業税
・法人税
最大23.4%の税額負担
・法人住民税
・法人事業税
赤字になった時の税金払う必要はない最低限の税金は払わなければならない
赤字になった時の繰越欠損3年
(青色申告を提出した場合)
10年
決算期個人の確定申告(毎年3月15日期限)法人が決めた決算月
社会保険事業者の負担なし
(5名未満の場合)
会社負担あり
資金調達金融機関等の融資
補助金・助成金
クラウドファンティングなど
株式や社債を発行して資金調達できる
事業開始の手続き方法開業届の提出法人登記
事業開始にかかる費用0円法定費用と資本金
株式会社:約25万円〜
合同会社:約10万円〜
事業の廃止廃業届の提出法務局・税務署等への届出や公示が必要
(費用が最低でも8万円ほど必要)
商売をする上の信用度法人に比べると低い高い
経費にできる範囲事業にかかる費用は経費にできるが、事業主の給与や生命保険は経費にできない経費として認められる費用が多い
生命保険所得控除全額経費
または2分の1は経費にできる

全部で12個の項目に分けて比較しております。

一つずつ、詳しく解説していきます。

税金の比較

個人事業主と法人で一番大きな違いと言えるのは、税金の種類です。個人事業主と法人では、所得によって税金が課される部分は同じですが、税金の種類が異なっており、課される税率も違います。

個人事業主の所得にかかる税金は所得税です。所得税は、所得が高くなるほど税金が上がっていく超過累進課税で、最大で45%の税金がかかることもあります。

一方、法人の所得にかかる税金は法人税です。法人税の税率は最大でも23.4%なので、所得が多くなっても税金を抑えることができるのです。

赤字になった時の税金

事業を経営する上では、毎年利益が出るような経営ができるのが理想ですが、計画通りに行かないこともあり、赤字になってしまうこともでてくるでしょう。個人事業主と法人とでは、赤字になった時の税金にも違いが出てきます。

個人事業主の場合は、赤字の時は税金を払う必要はありません。一方で、法人は赤字の場合でも最低限の税金を払わなければなりません。

法人に課税される法人住民税には、均等割と呼ばれる税があります。均等割は、所得に関係なく会社の規模によってかかる税金が発生してくるのです。このため、赤字でも最低5万〜7万程度の税金を必ず払うことになります。

赤字になった時の繰越欠損

個人事業主と法人とでは、赤字になった時の欠損金の繰越年数が違います。個人事業主は、赤字になった場合の欠損金の繰越は最大で3年です。

一方で、法人は翌年度以降10年間は繰越が可能となります。

また、欠損金の繰越は、翌期以降の黒字の時には相殺することが可能です。

決算期

法人と個人事業主とでは、決算期にも違いがあります。

個人事業主の場合、12月が決算月となり、翌年の3月15日までに確定申告をします。

その一方、法人では、決算月を自由に決めることができます。

社会保険

社会保険の観点からも法人の方がお得です。

個人事業主の場合は、社会保険を自分で負担しなければなりませんが、法人は会社が負担するので、個人的な負担を軽減できます。また、報酬金額を自由に設定することもできるので、社会保険料を抑えることもできるのです。

資金調達

資金調達の面でも法人にしておくことで有利に働きます。

法人は、株式や社債を発行し、株主から資金を調達できます。

一方、個人事業主の場合は、株式などの発行はできないため、自分で銀行からの借り入れを行ったり、補助金の申請などを行い資金を調達しなければなりません。

事業開始の手続き方法・費用

事業開始の手続きは、個人事業主の方が簡単です。

個人事業主では、「開業届」を税務署に提出するだけで完了します。最近では、開業届をオンラインで提出することもできるので、より簡単になりました。

その一方で、法人の場合は登記をしなければならないので、ひと手間かかります。登記の申請にはお金が必要で、株式会社の設立には約25万〜、合同会社で最低10万〜と費用を用意しなければなりません。

事業の廃止

事業の廃止でも個人事業主と法人での違いはあります。

個人事業主の場合、事業の廃止は「廃業届」を税務署に提出するだけで終了します。

しかし、法人は書類の提出だけでは終わりません。法務局や税務署などへの手続きが必要で、さらに費用も必要です。

商売をする上の社会的信用度

個人事業主と法人とでは、商売を行なっていく上での社会的信用度も違います。違いがよくわかるのは、銀行の借り入れです。

法人の場合、社会的信用度が高いため、銀行からの借り入れがしやすいです。法人は誰でも謄本を取り寄せて会社情報を見ることができます。法人の情報は第三者でも確認できるので安心できるわけです。

反対に、個人事業主には事業の情報を公開している場はありません。このため、個人事業主は社会的信用度が低く見られてしまい、銀行からの借り入れが難しくなるのです。

経費にできる範囲

経費にできる範囲も個人事業主と法人とで違いがあります。

個人事業主には、事業主の給与や生命保険などは経費にできません。

反対に法人の場合、役員などの給料や保険など経費にできる範囲は広く認められています。

法人化したほうが良い方

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個人事業主と法人の違いはわかったけど、それでもどちらにしたほうがいいのか考えてしまう人もいらっしゃるでしょう。そこで、どんな人が法人化したほうが良いかを解説します。

法人化したほうが良い人は次の通りです。

  • 個人事業主としての年間所得が700万〜800万円を超えた人
  • 資金調達が必要となった時

順番に解説していきます。

個人事業主としての年間所得が700万〜800万円を超えた人

個人事業主としての年間の所得が700万円〜800万円を超えた人は、法人化したほうが良いといえます。理由は、累進課税制度で適用されている点です。

個人事業主の場合、所得が上がると税率も上がっていき、最大で所得の45%もの税金がかかります。個人事業主の所得は700万〜800万円になると所得税が23%と法人税の最大税率と同じくらいの税率に上がります。

このことから、個人の所得が700万〜800万円を目処に法人化したほうが節税対策にもなってくるのです。

資金調達が必要となった時

2つ目の法人化したほうが良い人とは、資金調達が必要となった人です。法人は資金調達が株式や社債を発行することで、株主などから資金を調達することができます。

一方で、個人事業主は、銀行からの借入や寄付金、クラウドファンティングなどで資金を調達することができますが、時間や労力がかかるなどのデメリットが多いです。将来の設備投資が必要になったり、大きなプロジェクトを成功に導くための資金が必要となった場合などのタイミングなどで法人化するのが良いでしょう。

法人化しないほうが良い方

続いて、法人化しないほうが良い人についてご紹介します。
法人化しないほうが良い人の特徴として、次の2つを取り上げます。

  • 初期費用にお金をかけたくない人
  • 節税効果への期待ができない人

こちらも順番に解説します。

初期費用にお金をかけたくない人

個人事業主の最大のメリットは、開業や廃業にお金がかからない点です。事業を始めたい場合は、開業届に必要事項を記入して、税務署に提出、受理されれば事業として始められます。

一方、法人を設立する場合は、法務局などに謄本を作成して提出しなければならない点や、設立に費用がかかったり、手間がかかります。費用も少額で済まないことから、費用をかけたくない方にはお勧めできません。

節税効果への期待ができない人

法人化しないほうが良い人の特徴の2つ目は、節税効果ができない人です。法人の利益によって法人税が課せられますが、そもそも利益の少ない人にとっては法人化してもあまり意味はありません。

むしろ、赤字になってしまった場合でも最低限の税金は払わなければならないため、利益を多く求めてない人にとってはデメリットになります。

法人化の失敗例

次は、法人化の失敗例をもとに法人化で得する条件を見ていきましょう。個人事業主から法人化するにもタイミングが必要です。このタイミングを間違えてしまうと、法人化したが失敗してし待って後々に後悔してしまうこともあります。

ここでは、失敗例を2つ取り上げ、気をつけるべき点を解説していきます。

失敗例は次の通りです。

  • 決算月の決め方に失敗してしまい事務作業が増えた
  • 無計画な事業の拡大で逆に借金が増える

決算月の決め方に失敗して事務作業が増えた

法人化するにあたり、念入りな計画を立てていかないと失敗してしまうことがあります。よくあるのが、決算月をいつにするかです。

法人は一年目に決算月を決めることができます、この決算月を安易に決めてしまうのは要注意です。よくある決算月の決め方にキリの良い12月や3月に決めてしまうことです。

3月の決算月は多くの企業が決めていることもあり、税務業務を依頼する税理士業界も多忙を極めます。そのため、繁忙期の税理士に依頼することで、ゆっくりと話す時間が取れなかったりすることがあるためおすすめしません。

また、繁忙期に当たるので税理士に断られてしまうこともあります。その分、自分で処理しなければならない事務作業が増えてしまうため、繁忙期を決算月にするのはおすすめできません。

決算月は安易に決めるのではなく、繁忙期や事業が落ち着いた時期を選ぶのが良いでしょう。

無計画な事業の拡大で逆に借金が増える

法人化する時に気をつけるべき点として、無計画な事業計画の拡大です。

業界のリサーチ不足や安易な計画が原因で、法人化してしまうことで、借金を多く抱えてしまうこともあります。ニーズや業界の動向などをしっかりと調査し、計画を立てることで、法人化のタイミングを知ることができます。

法人化は憧れる点も多くありますが、まずは、ご自分が経営する事業のニーズや経営状況などをしっかりと把握することで、法人化のタイミングを知ることができます。

まとめ

今回は、個人事業主と法人の違いから法人化するタイミングなど得する条件をご紹介しました。

法人化のメリットは多くありますが、法人化の計画とタイミングを間違えてしまうと借金や無駄な税金を払うことにもなります。

本記事を読んで、個人事業主が合っているのか、法人化にするタイミングはいつが良いのかなど様々な状況があるとは思いますが、ご自身の状況がどこにあるのかを把握することで、法人化のタイミングもわかるようになります。

ぜひ、本記事を参考にして、法人化のタイミングを検討してみてください。